ランダム行列をちょっと勉強してみるテスト
数学セミナーの2019年2月号でランダム行列が特集されていた。
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2019/01/12
- メディア: 雑誌
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ランダム行列は以前から勉強したくて、こちらの本なんかをちら見していたけど、 ちゃんと式などは追っていなくて、現象論的に面白そうだなーというくらいの認識だった。
- 作者: 渡辺澄夫,永尾太郎,樺島祥介,田中利幸,中島伸一
- 出版社/メーカー: 森北出版
- 発売日: 2014/04/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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そんなところで今月の数セミを読んでさらに興味がわいた。 余談だが、最近数セミの特集が無双すぎて定期購読再開を検討しているところである。
もちろん頁数制約や一般向け雑誌という性質上、数セミだけを読んでもその数学的な構造はおえないだろうが、 物理や情報の文脈でどういう風に顔を出すかを外観できて非常に興味深い。
そもそもランダム行列とは、確率変数を成分とする行列のことで、そういう行列のアンサンブルを考えたときの統計的性質に興味があるという分野。 特に行列サイズが非常に大きいとき(例えば無限大の極限)での振る舞い(半円則で知られるような固有値分布など)に興味があるようだ。
奇遇である。私も興味がある。 ということでちゃんと勉強していこうという話である。
香取眞理さん(中央大学理工学部)の「ランダム行列とはなにか」でガウシアンユニタリアンサンブル(GUE)が紹介されている。 (余談だが、学部時代(10年以上前)に香取さんの非平衡統計力学 (裳華房テキストシリーズ―物理学)で流体と統計力学の関係を勉強したような気がする。なんかすごくわかりやすかったという記憶があるが、多分わかっていなかったと思う。)
さて、GUEは行列の各成分がi.i.d.なガウシアンに従い、さらにエルミート条件を課したものである。 すると、の固有値がすべて実数になることが保証されたりと調べやすい対象になるのである。
で、エルミート条件よりのランダム行列の固有値の確率測度が以下(P.10の(4)式)のように得られる。
\begin{align} P(\boldsymbol{\Lambda} \in d \boldsymbol{\lambda}) = c_2 \exp \left(-\frac{\beta}{4} |\boldsymbol{\lambda}|^2\right) \prod_{1\leq j < k \leq N} (\lambda_k-\lambda_j)^\beta d\boldsymbol{\lambda} \end{align}
上記の導出仮定でのエルミート性を使っている。 \( c_2\)は規格化定数、\( \beta\) は逆温度パラメータ、 \( \mathrm{Tr}X^\dagger X =\sum_{j=1}^N \lambda_j^2 = |\boldsymbol{\lambda}|^2 \)、\( d \boldsymbol{\lambda} = \prod_j^N d\lambda_j\)。
で、これの見方は、\(|\lambda_j - \lambda_k | \rightarrow 0 ( j \neq k)\)とすると、\(P(\boldsymbol{\Lambda} \in d \boldsymbol{\lambda}) \rightarrow 0\)になるので、固有値同士が斥力的な相互作用でランダムに分布している、ということを表している(しゅごい)。
で、これをギブス測度で書き直すとハミルトニアンが \begin{align} \mathcal{H} = \frac{\boldsymbol{|\lambda|}^2}{4} - \sum_{1\leq j < k \leq N} \log(\lambda_k - \lambda_j) \end{align} の格好で出てきて、2体間の相互作用が全固有値間に働き、2体ポテンシャルが常に発散する対数関数になっている。このような系は1次元対数ガス系と呼ぶ。
うーん、めちゃめちゃおもしろい(小並感)。
香取さんの記事はここで終わりではなく、GUEの拡散現象にも言及していて、固有値の時間発展であるダイソン模型を導出している。 GUEの固有値たちの運動方程式なので、上記の1次元対数ガス系を構成する粒子たちの運動方程式ということか。
おもしろすぎてやばい(語彙力)。
確率過程ちゃんと勉強せねばーという気持ちである。
固有値分布の円則は次のポストで適当に実験してみることにする。実験というほどでもないけど…。
私からは以上です。